知育玩具で伸びる子・伸びない子|大切なのは「何を買うか」より遊び方

「せっかくおもちゃを買うなら、子どもの成長につながるものを選びたい」

そう考えて、知育玩具を探している方も多いのではないでしょうか。

積み木、パズル、型はめ、ブロック。

最近では「思考力を育てる」「創造力を伸ばす」といった知育玩具もたくさんあります。

では、知育玩具をたくさん与えれば、子どもは伸びるのでしょうか。

私は、そう単純ではないと考えています。

これまで多くの子どもと向き合ってきて、特に印象に残っているのが、図鑑やパズルなど、何か一つに夢中になっていた子たちです。

もちろん、「パズルをすれば頭が良くなる」という話ではありません。

むしろ私が大切だと感じてきたのは、

「何を持っているか」よりも、「一つのものとどう遊んできたか」。

そして、その遊びを親がどう見守り、どう広げてきたかです。

今回は研究や公的資料も参考にしながら、知育玩具を子どもの成長につなげるために、家庭で大切にしたいことを考えてみます。


目次

知育玩具には本当に効果がある?

まず知っておきたいのは、特定の知育玩具を買っただけで、子どもの能力が自動的に伸びるわけではないということです。

一方で、「遊び」そのものが子どもの発達にとって大切であることは、さまざまな研究で指摘されています。

アメリカ小児科学会(AAP)は、発達段階に合った遊びについて、社会情緒・認知・言語・自己調整などの力を育む機会になるとしています。

また、親や養育者と一緒に遊ぶことは、安定した親子関係を育む機会にもなるとされています。 

日本でも、文部科学省の幼稚園教育要領では、幼児の自発的な活動としての遊びを、発達の基礎を培う重要な学習として位置づけています。

さらに、身近な物や遊具に関わりながら、**「考えたり、試したりして工夫して遊ぶ」**ことも重視されています。 

例えば積み木なら、

「どう積めば倒れないんだろう?」

と考える。

積んでみる。

倒れる。

積み方を変えてみる。

パズルなら、

形を見る。

向きを変える。

違う場所に入れてみる。

入らなければ、また考える。

遊びの中では自然に、

考える試す失敗する工夫するもう一度試す

というサイクルが生まれます。

私は、ここに知育玩具の大きな価値があると思っています。

大切なのは、

「この玩具を買えば○○力が伸びる」と考えることではなく、この玩具からどんな遊びや試行錯誤が生まれるかを見ること。

知育玩具は、子どもを賢くしてくれる魔法の道具ではありません。

でも、子どもが自分で考えたり、試したりするきっかけにはなってくれます。


伸びる子は「正しい遊び方」をしているとは限らない

大人がおもちゃを見ると、つい「正しい使い方」を考えてしまいます。

パズルなら完成させる。

積み木なら積む。

ブロックなら何かを作る。

でも、子どもは必ずしもその通りには遊びません。

積み木を車に見立てるかもしれない。

床いっぱいに並べて道を作るかもしれない。

全部箱から出して、また戻すことだけを延々と楽しむかもしれません。

大人からすると、

「それ、そうやって遊ぶものじゃないよ」

と言いたくなることもあります。

でも私は、すぐに正しい遊び方へ戻さなくてもいいと思っています。

アメリカ小児科学会も、子ども主体の遊びでは、子ども自身が意思決定をしたり、自分のペースで進んだり、自分の興味を見つけたりする機会になるとしています。 

知育玩具で大切なのは、大人が用意した正解にたどり着くことだけではありません。

「こうしたらどうなるんだろう?」

「これとこれを組み合わせたら?」

そんな子ども自身の発想も、大切にしてあげたいと思います。


「できない」ときこそ、すぐに教えない

これは、以前の記事「伸びる子の家庭で共通していた習慣」でも触れたことです。

子どもがパズルで困っている。

大人から見れば、

「そのピースはそこじゃなくて、こっち」

とすぐに分かります。

だから、つい教えたくなる。

でも、そこで少しだけ待ってみる。

子どもがピースを回す。

違うところに置く。

入らない。

また回す。

別の場所を試す。

そして、

「あ、入った!」

となる。

この自分で試して、自分で気づくまでの時間を大切にしたいと思っています。

研究では、子どもの問題解決に対して、親が必要に応じて支援を調整する「scaffolding(足場かけ)」と、その後の実行機能の発達との関連も報告されています。

2〜4歳の子ども82人を追跡した研究では、3歳時点での親のscaffoldingが、4歳時点の実行機能に影響していたことが報告されています。 

ここで大切なのは、

「何も手伝わない」ことではありません。

ずっとできずに嫌になってしまいそうなら、

「向きを変えてみたらどうかな?」

「こっちと比べてみる?」

とヒントを出してもいい。

私は、

「できるようにしてあげる」のではなく、「自分でできるところまで支える」

くらいの距離感が大切だと思っています。


難しい知育玩具ほどいいわけではない

「せっかくなら、少し難しいものを」

と思うこともあるでしょう。

でも、難しければ難しいほど子どもが伸びるわけではありません。

今の子どもには難しすぎるパズルを渡す。

できない。

大人に聞く。

大人が教える。

また分からなくなったら聞く。

これを繰り返していると、

本来なら、

「自分で考える遊び」

だったものが、

「大人に答えを教えてもらう遊び」

になってしまうことがあります。

一方で、子どもの主体性を残しながら大人が必要な支援をする「guided play(ガイドされた遊び)」について、39研究を対象にした系統的レビュー・メタ分析では、直接教える方法と比べ、一部の初期数学、形の理解、課題の切り替えなどで良い結果が確認されています。

ただし、すべての発達領域でguided playの方が優れていたわけではなく、研究者もエビデンスにはまだ限界があるとしています。 

だから私は、

大人が全部教えるか、完全に放っておくかの二択ではなく、その子に合わせて少し支える

くらいがちょうどいいと考えています。

知育玩具の難易度も、

「少し頑張れば、自分でできそう」

くらいを一つの目安にしてみてください。


「たくさん持っている=いい知育環境」ではない

知育玩具を調べ始めると、本当にいろいろな商品が出てきます。

これも良さそう。

あれも良さそう。

気づけば、おもちゃ箱がいっぱい。

でも私は、知育玩具の数を増やすことが、そのまま知育になるとは考えていません。

興味深い研究があります。

18〜30か月の幼児36人に、

4個のおもちゃがある環境

と、

16個のおもちゃがある環境

の両方で遊んでもらった実験です。

その結果、4個のおもちゃがある環境の方が、一つのおもちゃで遊ぶ時間が長く、遊び方の種類も多くなりました。 

もちろん36人を対象とした一つの研究なので、

「おもちゃは4個にすべき」

という意味ではありません。

ただ、

たくさんのおもちゃを見えるところに置くことが、必ずしも遊びの質を高めるわけではない

ということを考える材料にはなります。

一つのおもちゃでも、子どもは成長するにつれて違う遊び方をします。

最初は触る。

倒す。

少しすると積む。

並べる。

さらに大きくなると、家を作る。

道路を作る。

だから、

「もう遊んだから次のおもちゃ」

ではなく、

「まだ違う遊び方があるかもしれない」

と考えてみる。

一つのものを繰り返し使うことにも、意味があると思います。


親も一緒に楽しむ

そして、知育玩具を使うときに私が大切にしたいのが、

親も一緒に楽しむことです。

これは単なる私の感覚だけでもありません。

AAPは、親や養育者と一緒に遊ぶことについて、認知・言語・社会情緒・自己調整などの力に関わるだけでなく、親子の安定した関係を育てる機会にもなるとしています。 

ハーバード大学Center on the Developing Childも、子どもと大人が互いに反応し合う「serve and return」のようなやり取りが、幼児期の発達に重要だと説明しています。 

知育玩具を買うと、

「せっかく買ったんだから遊んでほしい」

「これで考える力を伸ばしてほしい」

と、つい目的を持ってしまいます。

するといつの間にか、

「ほら、これやってみよう」

「違うよ、こっちだよ」

「昨日できたでしょ?」

と、遊びがちょっとした「勉強」になってしまうことがあります。

でも、

「これ面白いね」

「うわ、倒れた!」

「こっちに置いたらどうなるんだろう?」

と一緒に面白がる。

ただし、親が全部やってしまうわけではありません。

先生ではなく、一緒に遊ぶ人になる。

私は、このくらいの距離感がちょうどいいと思っています。

「やらされる知育」ではなく、「親子で楽しい遊び」の中に学びがある。

そんな状態を作れたら理想的ですね。


意外と大切。「遊び方・使い方」を一度読んでみる

もう一つ、知育玩具を買ったときにおすすめしたいことがあります。

それは、

付属している「遊び方」や「使い方」を、大人が一度ちゃんと読んでみること。

意外と、そのまま箱を開けて子どもに渡して終わってしまうことも多いと思います。

もちろん、説明書どおりに子どもを遊ばせるためではありません。

むしろ知りたいのは、

「このおもちゃは、どんな意図で作られているんだろう?」

ということです。

形を見分けることを狙っているのか。

指先を使うことなのか。

順番を考えることなのか。

組み合わせを試すことなのか。

作り手の意図を一度知っておくと、

「こんな遊び方にも広げられそうだな」

「今はこの部分を面白がっているんだな」

と、子どもの遊びを見るヒントになります。

だから私は、

説明書は「正しい遊び方を覚えるもの」ではなく、親が遊びを広げるヒントをもらうもの

くらいに考えるのがいいと思っています。

作り手の意図を知ることと、子どもの自由な遊びを守ることは両立できます。


子どもの「ハマる」を見逃さない

これまで多くの子どもと向き合ってきて、印象に残っていることがあります。

伸びていった子の中には、

図鑑やパズルなど、何か一つにものすごくハマる時期があった子が多かった

ということです。

もちろん、

「図鑑を読めば伸びる」

「パズルをすれば頭が良くなる」

という因果関係を言いたいわけではありません。

私が注目しているのは、

一つの興味を自分から深く掘っていく経験

です。

例えば恐竜にハマったなら、

恐竜のおもちゃで遊ぶ。

図鑑を見る。

名前を覚える。

博物館へ行く。

本物の化石を見る。

「どうして絶滅したの?」

という疑問が生まれる。

また図鑑を開く。

そうすると、

遊び体験ことば新しい疑問

と、世界がどんどん広がっていきます。

これは以前の記事で書いた、

「この子がどの方向に伸びたがっているのかに気づく」

ということにもつながります。

知育玩具は、

子どもを賢くするための道具というより、子どもの「好き」を発見する入口

として見ると、とても面白いものだと思います。


年齢より「今、その子が何を楽しんでいるか」

知育玩具には対象年齢があります。

もちろん、誤飲などの安全面に関わる対象年齢や注意事項は必ず守ることが前提です。

そのうえで、遊びの選択については、

「3歳だから3歳向けのおもちゃ」

だけで決めなくてもいいと思います。

今、手先を使うことにハマっている。

形に興味を持ち始めた。

数字を見ると反応する。

文字を見つけると喜ぶ。

ごっこ遊びを延々としている。

子どもには、その時々で、

「今、これが面白い」

があります。

文部科学省の幼稚園教育要領でも、幼児一人ひとりの興味や関心、発達の実情などに応じて環境を構成し、幼児自身が環境に関わりながら活動を展開することを重視しています。 

だから私は、

年齢だけで玩具を決めるのではなく、その子が今どこに興味を向けているのかを見る

ことも大切だと思っています。


知育玩具を生かす「5つの関わり」

ここまでの話を整理すると、知育玩具そのもの以上に大切なのは、周りの大人の関わり方です。

私は、次の5つを意識したいと考えています。

① 知る

子どもが何に興味を持っているのかを見る。

「何を伸ばしたいか」だけではなく、

「今、この子は何が面白いんだろう?」

から考えます。

② 待つ

できないからといって、すぐに答えを教えない。

少し待って、考える時間を残します。

③ 認める

完成した結果だけではなく、

考えたこと、工夫したこと、何度も試したこと

にも目を向けます。

④ 続ける

次々と新しい知育玩具を買わなくてもいい。

同じ遊びを繰り返す中で、昨日とは違う遊び方を見つけることもあります。

⑤ 広げる

おもちゃの中だけで終わらせない。

恐竜が好きなら図鑑へ。

魚が好きなら水族館へ。

星が好きなら夜空を見に行く。

遊びから生まれた興味を、本や実体験につなげていく。


高価な知育玩具じゃなくてもいい

ここまで読むと、

「じゃあ、良い知育玩具を買わないと」

と思うかもしれません。

でも、必ずしも高価なものを買う必要はありません。

空き箱。

紙。

シール。

洗濯ばさみ。

身近にあるものでも、子どもは驚くほど遊びを作ります。

大切なのは値段ではなく、

自分で考えたり、試したり、工夫したりできる余白があること。

「何の能力が伸びるか」だけではなく、

「この子なら、これでどんな遊びを作りそうか」

という視点を持ってみてほしいと思います。


まとめ|知育玩具は「買って終わり」ではなく、親子でどう遊ぶかまでが知育

知育玩具を探していると、

「思考力」

「創造力」

「集中力」

「知能」

といった言葉がたくさん出てきます。

すると、つい、

「どの知育玩具を買えば、一番子どもが伸びるんだろう?」

と考えてしまいます。

でも私は、

何を買うかだけで、子どもの成長が決まるわけではない

と思っています。

子どもの興味を知る

できないときに少し待つ

結果だけではなく、工夫したことを認める

一つの遊びを続ける

そこから生まれた興味を、別の世界へ広げる

そして何より、

親自身も一緒に楽しむ。

研究を見ても、遊びそのものや、子どもの主体性を残した大人の関わりには発達・学習上の意味があることが示されています。一方で、「特定の知育玩具を買えば子どもの能力が伸びる」と単純に言えるわけではありません。 

だから、

「この知育玩具で何の能力を伸ばそう?」

と考える前に、

「これ、一緒に遊んだら楽しそうだな」

と思えるものを選んでみる。

私は、それくらいから始めていいと思っています。

知育玩具は、買って子どもに渡したら終わりではありません。
親子でどう遊ぶかまで含めて、知育なのだと思います。

参考資料

本記事の作成にあたり、以下の公的資料・研究論文等を参考にしました。

■ 文部科学省「幼稚園教育要領」
幼児期の教育では、幼児の自発的な活動としての「遊び」が重要な学習として位置づけられています。
文部科学省|幼稚園の教育内容等⁠

■ American Academy of Pediatrics(AAP)「The Power of Play: A Pediatric Role in Enhancing Development in Young Children」
発達段階に合った遊びと、親・養育者との関わりが、子どもの認知・言語・社会情緒・自己調整などの発達に果たす役割についてまとめた臨床報告です。
AAP|The Power of Play⁠

■ Hammond et al.(2012)「The effects of parental scaffolding on preschoolers’ executive function」
2〜4歳の子どもを追跡し、親が子どもの問題解決を適切に支援する「scaffolding(足場かけ)」と実行機能の発達との関係を検討した研究です。
PubMed|The effects of parental scaffolding on preschoolers’ executive function⁠

■ Skene et al.(2022)「Can guidance during play enhance children’s learning and development in educational contexts? A systematic review and meta-analysis」
39研究を対象に、子どもの主体性を残しながら大人が支援する「guided play」の効果を検討した系統的レビュー・メタ分析です。一部の初期数学、形の理解、課題切替、空間語彙などで効果が確認される一方、すべての領域で優位性が確認されたわけではないことも報告されています。
Oxford Academic|Child Development掲載論文⁠

■ Dauch et al.(2018)「The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play」
18〜30か月の幼児36人を対象に、4個と16個のおもちゃがある環境での遊びを比較した研究です。おもちゃが少ない環境では、一つのおもちゃで遊ぶ時間が長く、より多様な遊び方が見られました。
PubMed|The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play⁠

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