ひらがなはいつから教える?|始める年齢より大切な「文字への興味」の育て方

「ひらがなって、いつから教えたらいいんだろう」

子どもが2歳、3歳と大きくなってくると、一度は気になることかもしれません。

周りから、

「もう自分の名前が読めるよ」

「ひらがな、けっこう覚えてるよ」

なんて話を聞くと、

「うちも、そろそろ始めた方がいいのかな」

と少し焦ることもあると思います。

でも、ひらがなを始める時期に、

「○歳になったら始める」

という一律の正解があるわけではありません。

文部科学省も、幼児期の文字との関わりについて、生活や遊びから切り離して文字を覚え込ませるのではなく、一人ひとりの興味や関心に応じて、文字を使う楽しさを経験していくことを大切にしています。

だから今回は、

「何歳から教える?」よりも、「今、この子は文字に近づいてきている?」

という視点を大切にしたいと考えます。

この記事で一番伝えたいこと

ひらがなは、学びのスタート地点ではありません。

子どもが身の回りのものに興味を持ち、それを表すことばを知り、ことばの音に気づき、その音を表すものとして文字に出会う。

その流れの中で生まれる、

「これ、なんて書いてあるの?」
「読んでみたい!」

という気持ち。

その芽が出てきたときが、ひらがなを楽しむ一つのタイミングです。

目次

ひらがなは何歳から教えればいい?

結論から言えば、

年齢だけで決める必要はありません。

もちろん、年齢が上がるにつれて、文字に興味を示したり、読める文字が増えたりする子は多くなります。

でも、文字への興味や関心には個人差があります。

文部科学省の「幼稚園教育要領解説」でも、文字への興味・関心には個人差があることを踏まえ、生活から切り離して一律に覚えさせるのではなく、幼児一人ひとりの興味や関心に応じることが大切だとされています。

だから、

「3歳になったから、そろそろ」

「周りの子が読んでいるから、うちも」

ではなく、

「最近、この子、文字を気にしているな」

という姿を見てみる。

まずは、そこからでいいと思います。

そもそも子どもに文字を教え始めるタイミングはこちらで詳しく解説しています。

文字を読む前に、子どもの中で起きていること

文字を読む。

その姿だけを見ると、

「あ」という形を見て「あ」と覚える。

そんな学習を想像するかもしれません。

でも、その前にはもっと長い道のりがあります。

多くの子どもたちの言葉の習得を見ていると、子どもたちの文字との出会いはこんなふうではないかと考えています。

※これは子どもの発達が必ずこの順番で進むことを示したものではありません。幼児期のことば・文字に関する資料や研究を参考に、文字との出会いをKOTOMEBUが分かりやすく整理したものです。

“ひらがなを読む”ということは、ある1文字から始まるわけではありません。

そのずっと手前にある、

「これ、なんだろう?」

という、物事への興味から始まります。

① まずは「物事への興味」

たとえば、散歩をしているとき。

子どもが道端で何かを見つけて、

「あ!」

と指を差したとします。

そこにいたのは、小さなカエル。

大人にとっては何気ない光景でも、子どもにとっては新しい発見です。

電車。

虫。

犬。

花。

食べ物。

車。

身の回りには、子どもの「これ何?」を引き出すものがたくさんあります。

そして、その「知りたい」こそが、ことばへ向かう最初の入口になります。

「カエルだね」

「ぴょんぴょん跳んでるね」

「緑色だね」

子どもが興味を持ったものに、大人がことばを添える。

すると、目の前にあるものと、ことばが少しずつつながっていきます。

文字を教えるより前に、

世界には「知りたいもの」がたくさんある。

まずは、そんな経験をたくさんしてほしいと思います。

親の関わり:知る

「何を教えよう?」の前に、

「この子は今、何が好きなんだろう?」

を見てみる。

何度も指を差すもの。繰り返し持ってくる絵本。ずっと眺めているもの。

そこに、その子のことばを育てる入口があります。

② 興味のあるものに「ことば」がついていく

最初は「あ!」だったものが、

「かえる」

になる。

そして、

「かえる、いた!」

「かえる、ぴょんした!」

と、ことばが少しずつ世界を説明できるようになります。

ここで大切なのは、

ことばは、ただの音ではない

ということです。

「か・え・る」という音のまとまりには、あの生き物を表す「意味」があります。

子どもは、人との会話や絵本、歌、遊びなどを通して、たくさんのことばと出会っていきます。

「これには名前があるんだ」

「このことばを使えば伝えられるんだ」

そんな経験が積み重なっていきます。

だから、ひらがなを早く覚えることだけに目を向ける前に、

知っていることば、使えることばを増やしていく。

これも、文字につながっていく大切な土台です。

③ 「かえる」の“か”に気づく

さらに、ことばにたくさん触れていくと、子どもは「ことばの意味」だけでなく、ことばの音にも気づいていきます。

たとえば、

「かえる」

「からす」

「かさ」

「あれ?全部“か”から始まってる」

という気づき。

あるいは、

「かずきくんの“か”!」

のように、自分の名前と同じ音を見つけることもあります。

こうした、ことばを音のまとまりとして捉える力を「音韻意識」といいます。

少し難しい言葉ですが、

  • しりとりをする
  • 同じ音から始まることばを探す
  • ことばを音のまとまりとして捉える

といった力にも関係します。

日本の幼児を対象にした研究でも、ひらがなの読みと音韻意識には密接な関連があることが報告されています。

つまり、

文字を読む力の手前には、ことばの「音」に気づく経験もある

ということです。

親の関わり:待つ

まだ文字に興味を示していないのに、

「これは何の文字?」

「昨日やったでしょ?」

と急ぐ必要はありません。

歌ったり、しりとりをしたり、絵本を読んだり。

ことばそのものを楽しみながら、子ども自身が気づく瞬間を待つ。

それも大切な関わりです。

④ 「音」と「文字」がつながっていく

そして、あるとき。

子どもが看板を見て、

「あ!これ、ぼくの名前にもある!」

と文字を指差すかもしれません。

これまで音として知っていた「か」と、目の前にある「か」という形がつながる。

すると文字は、

覚えなければならない記号から、意味のあるものへ

変わっていきます。

自分の名前。

家族の名前。

大好きなお菓子。

いつも読む絵本。

駅の看板。

お店の名前。

子どもの生活の中には、すでにたくさんの文字があります。

そこで、

「ほんとだ。同じ“か”だね」

と一緒に見つけてみる。

それだけでも十分です。

文部科学省も、幼児期には日常生活の中で文字の役割に気づいたり、必要に応じて文字を使う楽しさを味わったりすることを大切にしています。

親の関わり:認める

「読めたね!」だけではなく、

「見つけたね」
「同じ文字に気づいたね」

も大切に。

何文字覚えたかではなく、子ども自身が文字に気づいたことを認めます。

「そろそろ、ひらがなかな?」のサイン

では、家庭ではどんな姿を目安にすればいいのでしょうか。

たとえば、

  • 自分の名前に入っている文字を気にする
  • 看板やパッケージの文字を指差す
  • 「これ何て書いてある?」と聞く
  • 同じ文字を見つける
  • 絵本の文字をまねして読む
  • しりとりなどのことば遊びを楽しむ

こうした姿が見えてきたら、

文字への興味が育ってきているサインの一つ

として考えてもよいでしょう。

4歳児105名を対象とした研究でも、読み書きへの興味と、かなの文字と音を結びつける知識との関連が報告されています。

ただし、ここでチェックリストにしすぎないことも大切です。

「3つ当てはまったら開始」

「全部できないと遅れている」

という基準ではありません。

あくまで、

「今、この子は何に興味を持っているかな?」

を見るためのヒントです。

興味を持ち始めたら、家庭でできる3つのこと

「最近、文字を気にするようになってきた」

そんな姿が見えてきたら、特別な教材を急いで用意しなくても、家庭でできることがあります。

① 「自分に関係する文字」から楽しむ

最初から「あいうえお」を順番に覚える必要はありません。

たとえば、

「ゆうた」の「ゆ」。

「ママ」の「ま」。

大好きな「でんしゃ」の「で」。

子どもにとって意味のあることばから文字に触れてみます。

自分が大好きなものと文字がつながれば、文字は単なる記号ではなくなります。

「自分の世界を表しているもの」

になっていきます。

② 日常の中で文字を見つける

文字カードだけが教材ではありません。

スーパー。

駅。

道路標識。

お菓子の袋。

絵本。

街を歩くだけでも、文字はいたるところにあります。

「あ、“い”があったね」

「これ、お名前と同じ文字だね」

そんなやり取りで十分です。

文字の時間を特別につくらなくても、

普段の生活そのものが、文字との出会いになります。

親の関わり:続ける

毎日「ひらがなを10個覚える」より、

生活の中で少しずつ文字に出会う。

親子ともに負担なく、自然に続けられる形を大切にします。

③ 読めた文字を「次の興味」につなげる

大好きな恐竜の図鑑を開いて、

「きょうりゅう」の「き」が読めた。

電車の絵本を見ながら、

「でんしゃ」の「で」に気づいた。

それだけで終わらせず、

「この恐竜、何て名前かな?」

「この電車、どこに行くんだろう?」

と、その先へ進んでみます。

少しずつ文字が読めるようになると、子どもは文字を手掛かりに、自分で情報を得られる場面が増えていきます。

ここに、文字を学ぶ面白さがあります。

親の関わり:広げる

文字を覚えることをゴールにしない。

読めるようになった文字を使って、

その子の「もっと知りたい」へつなげていく。

文字は、世界を広げるための道具です。

絵本は「文字を教える教材」にしなくていい

絵本を読んでいると、

つい、

「これ何て読む?」

「この文字、昨日やったよね?」

と聞きたくなることがあります。

もちろん、子どもが楽しんでいるなら、それも一つの遊びです。

でも、毎回クイズにする必要はありません。

まずは、

物語を楽しむ。

絵を見る。

知らないことばに出会う。

「次どうなるんだろう」と想像する。

親子で笑う。

絵本そのものを楽しむ経験を大切にしていい。

その中から、

「この文字なんだろう?」

と自然に興味が向くことがあります。

日本の未就学児とその保護者を対象とした研究でも、家庭での読み聞かせの頻度と、かな文字を読む力との関連が報告されています。

ただし、この研究だけから、

「毎日○冊読めば、ひらがなが早く読める」

といった因果関係まで言えるわけではありません。

絵本を「ひらがなを覚えさせるためだけの教材」にしない

親子で楽しみながら言語に興味を持つ遊びと捉えていきたいですね。

「早く教えるほどいい」とは限らない

では、

「早くからたくさん教えれば、その分早く読めるようになる」

のでしょうか。

ここも、単純ではありません。

家庭で文字を教えること自体が悪いわけではありません。

子どもが楽しんでいるなら、一緒に文字を書くことも、ひらがなカードで遊ぶことも素敵な経験です。

一方で、日本の年長児を対象とした研究では、家庭で文字を教える頻度は書く力とは関連していたものの、ひらがなの読む力については、音韻認識などの認知的な力との関連が示されています。

つまり、

「たくさん教える=そのまま読む力になる」

という単純な関係ではありません。

だからこそ、

何歳から始めたか。

何文字覚えたか。

周りの子より早いか。

だけを見るのではなく、

その子が今、何に興味を持ち、何を楽しんでいるのか。

そこを見ながら、必要なときに少し手を差し出す。

そのくらいの距離感でいいのではないでしょうか。

ひらがなは「ゴール」ではなく、世界を広げる道具

最初は、

「あ」

という一文字だったかもしれません。

それが少しずつ、

「あ・り」

「あり」

と読めるようになる。

図鑑を開いて、

「あり」

という文字を自分で見つける。

その先に、

「女王アリっているんだ!」

という、新しい発見が待っているかもしれません。

そう考えると、

文字を読めること自体がゴールではありません。

文字を使って、

自分で絵本を読む。

自分で名前を見つける。

自分で疑問を確かめる。

そして、

自分の力で世界を少しずつ広げていく。

そのための道具の一つが、ひらがなです。

だから、できるだけ早く文字を覚えることよりも、

「読めるって面白い」

と思える経験を増やしていく。

そんな文字との出会いを大切にしたいですね。

KOTOMEBUの「5つの関わり」で考える、ひらがなの始め方

知る
今、その子が何に興味を持っているのかを見る。

待つ
まだ文字への興味がなければ、無理に急がせない。

認める
一文字読めたことだけではなく、「気づいた」「見つけた」という発見を認める。

続ける
特別な勉強だけではなく、会話や絵本、日常生活の中でことばや文字に触れていく。

広げる
読めるようになった文字を、その子の「もっと知りたい」世界へつなげる。

ひらがなのスタートは、「何歳?」より「興味が動いたとき」

物事への興味が、ことばへ。

ことばが、音への気づきへ。

音が、文字へ。

そして文字が、自分で世界を知る力へ。

「早く読めるようにしなきゃ」と急ぐのではなく、

「これ何?」
「なんて書いてあるの?」
「自分で読んでみたい」

そんな気持ちが生まれたとき、その芽をそっと支えていきましょう。

参考資料

  • 文部科学省『幼稚園教育要領解説』
    文部科学省資料⁠
  • 丹治敬之ほか(2020)「年少から年長幼児におけるかな読みと音韻意識の関連」
    J-STAGE掲載ページ⁠
  • 丹治敬之ほか(2024)「4歳児における読み書きの興味はかな読み習得の関連要因であるか?」
    J-STAGE掲載論文⁠
  • 大久保圭介ほか(2024)「絵本の読み聞かせと幼児のかな文字識字および情動理解の関連」
    J-STAGE掲載論文⁠
  • 猪俣朋恵ほか(2016)幼児期のひらがなの読み書きと家庭での文字環境等に関する研究
    J-STAGE掲載論文⁠

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