「本を読まない子」を本好きにするには?親がやめたいこと・始めたいこと

「うちの子、全然本を読まなくて……」

そんな相談を受けることがあります。

でも、私はまず、

「本当に何も読まないのかな?」

と考えます。

物語は読まないけど、恐竜図鑑ならずっと見ている。

長い絵本は嫌がるけど、短い絵本なら「もう一回!」と言う。

自分では読まないけど、読み聞かせなら楽しそうに聞いている。

それなら、「本嫌い」と決めるのはまだ早いかもしれません。

本好きにするために「読ませる」のではなく、その子の「読みたい」を見つけて、少しだけ世界を広げる。

今回は、子どもが自分から本を手に取りやすくなる家庭の関わりを、研究とこれまで子どもたちを見てきた経験から考えます。


目次

「本を読まない」の中身は同じじゃない

「本を読まない」と一言で言っても、理由はさまざまです。

幼児なら、まず見たいのは、

読み聞かせなら聞いていられるか。

そして、

どれくらいの長さなら楽しめるか。

5分の絵本なら楽しめるのに、15分の物語になると離れていく。

それなら、今は5分くらいがちょうどいいのかもしれません。

小学生以上なら、

そもそも教科書くらいの文章を無理なく読めているか

も確認したいところです。

文章を読むこと自体に大きな負荷がかかっている子に、

「もっと本を読みなさい」

と言っても、なかなか楽しめません。

以前、集中力について紹介したときにも書きましたが、難しすぎることに集中するのは大変です。

読書も同じ。

「読まない=本が嫌い」と考える前に、

今、その子に渡している本が合っているか

から見てみましょう。


① 「1日1冊」を目標にしすぎない

「本好きになってほしいから、毎日1冊読ませています」

一見、とても良さそうです。

もちろん、毎日の読書習慣が自然に続いているなら問題ありません。

でも、

「今日はまだ1冊読んでないよ!」

となり始めたら、少し注意したい。

1日1冊を達成することが目的になると、

本を楽しむことより、「読み終えること」が目的になる

場合があるからです。

私は、

「今日は何冊読んだ?」より、「もう一回!」と言える本に出会えたか

を大切にしたいと思っています。

同じ本を何度読んでもいい。

今日は読まない日があってもいい。

本はノルマではなく、

「面白いから開くもの」

であってほしいと思います。


② 物語を読まなくても、図鑑から始めていい

これまで見てきた中でも、

「特に読み聞かせをたくさんしてきたわけではないのに、本が好きになりました」

という家庭はあります。

そんな子を見ていると、

図鑑から本の世界に入っている

ことがあります。

恐竜。

昆虫。

電車。

宇宙。

魚。

興味のあるページを何度も開く。

最初は写真を見るだけだったのに、少しずつ名前や説明文を読むようになる。

それでいいと思います。

小学1年生を対象に、子ども自身に本を選ばせた研究でも、情報を扱う本、特に動物などをテーマにした本が好まれることが報告されています。

だから、

「物語を読まない=読書が嫌い」ではありません。

大切なのは、

その子の「知りたい!」と本がつながること。

図鑑だって立派な入口です。


③ 本はできるだけ子ども自身に選ばせる

図書館や書店に行くと、

「これが勉強になりそう」

「この年齢ならこれくらい読んでほしい」

と、つい親が選びたくなります。

でも、できるだけ子ども自身が選ぶ余地を残したい。

2025年に小学3年生110人を対象に行われた実験では、読む文章を自分で選べる条件の子どもは、割り当てられた条件よりも読書の楽しさと読解成績が高いという結果が報告されています。

「自分で選ぶ」ということ自体が、読書への関わり方に影響する可能性があります。

とはいえ、

全部子ども任せにする必要もない

と私は思っています。

たとえば、図書館で10冊借りるなら、

8冊は子どもが選ぶ。2冊は親が選ぶ。

これは研究で「8:2が最適」と証明された数字ではなく、私がおすすめしたい一つの方法です。

8冊で、その子の「好き」をたっぷり満たす。

そして親が選ぶ2冊では、

少し文章が長い本。

知らなかったテーマの本。

今よりほんの少し難しい本。

を混ぜてみる。

子どもの興味を尊重しながら、親が少しだけ先の世界を見せる。

このくらいのバランスがいいと思います。


④ 「読ませたい本」と「今読める本」を分ける

教育熱心な家庭ほど、ここは注意したいところです。

「そろそろこの名作を読ませたい」

「5歳ならこれくらい」

「小学生だから文字の多い本を」

親としては自然な気持ちです。

でも、

親が読ませたい本と、その子が今楽しめる本は同じとは限りません。

文字が多すぎる。

知らない言葉ばかり。

話が長すぎる。

そうなると、本の内容を楽しむ前に「読む作業」で疲れてしまいます。

そんなときは、レベルを下げていい。

短い本に戻っていい。

読み聞かせに戻ってもいい。

簡単な本を読む=後退ではありません。

まずは、

「読めた」より「面白かった」。

そこから少しずつ広げていけばいいと思います。


⑤ 読み聞かせは「自分で読めるようになったら終了」じゃない

本好きな子の家庭を見ていると、やはり読み聞かせをしっかりしてきた家庭は多いと感じます。

2026年に日本の小学1年生2,609人を対象に発表された研究でも、0〜5歳までの親子での共有読書の累積期間が長いことと、小学1年生時点の読書習慣などとの間に段階的な関連が報告されています。

ただし、この研究だけから、

「読み聞かせを長くすれば必ず本好きになる」

と因果関係まで断定することはできません。

それでも、読み聞かせには大きなメリットがあります。

自分ではまだ読めない本も楽しめること。

5歳の子が、自力では難しい物語を親に読んでもらう。

知らない言葉が出てくる。

知らない世界を見る。

笑ったり、怖がったりする。

「自分で読めるか」と「その物語を楽しめるか」は別です。

だから、自分で文字を読めるようになったからといって、読み聞かせを急いで卒業しなくてもいいと思います。


⑥ 読んだあとは「確認テスト」ではなく、世界を広げる

読み終わったあと、

「主人公はどこに行った?」

「何匹出てきた?」

「最後どうなった?」

と聞きたくなることがあります。

もちろん、こうした質問そのものが悪いわけではありません。

対話しながら本を読むことは、語彙や言語発達を支える方法として研究されています。

ただ、毎回、

「ちゃんと読めていたか確認する時間」

にしなくていいと思います。

私がおすすめしたいのは、

本の中で生まれたイメージを、親子でもう少し膨らませること。

たとえば、

「ママ、このオオカミちょっと怖かったな」

「この森、本当にあったら行ってみたいね」

「この恐竜、家にいたらどこで寝るんだろう?」

「○○ちゃんだったらどうする?」

正解はありません。

以前、語彙力について紹介したときにも触れましたが、親自身が、

「私はこう思った」

と感情や興味を伝えることも、会話を広げるきっかけになります。

実際、読み聞かせのときに、

「ママ、このお話好きだな」

「このオオカミ怖いなぁ」

と自然に話していた家庭で、とても本好きになった子もいました。

本を閉じた瞬間に読書を終わらせるのではなく、

本の世界を現実の会話まで少し広げてみる。

そんな読み方も楽しんでほしいと思います。


⑦ 親が本好きじゃなくても大丈夫

「子どもを本好きにするには、親も本を読まないとダメですか?」

そんな心配もあるかもしれません。

もちろん、親自身が本を楽しんでいる姿を見せられたら素敵です。

家庭の読書環境と子どもの読書・読解との関連を示す研究もあります。

でも、

親が読書家じゃないから、子どもも本好きになれない

とは考えなくていい。

まず大切にしたいのは、

子どもが本を読むことを否定しないこと。

「またその図鑑?」

「そんな本ばっかり読んで」

ではなく、

「それ好きだね」

と受け止める。

そして、

欲しい本を買える。

図書館に行ける。

読みたい本が手の届くところにある。

そんな本にアクセスできる環境をつくってあげる。

親自身の好き嫌いにかかわらず、できることはたくさんあります。


まず家庭でやるなら、この7つ

辞めたい・見直したいこうしてみる
「1日1冊」をノルマにする「もう一回!」を大切にする
物語ばかり進める図鑑や興味のある本から始める
親が全部選ぶ子どもの選択中心+少し親が選ぶ
年齢相応にこだわる今楽しめる難易度にする
自分で読ませることを急ぐ読み聞かせも続ける
読後に正解を求めるイメージや感情を広げる
親も本好きでなきゃと思う読みたい本に触れられる環境を作る

全部やる必要はありません。

一つだけでも十分です。


まとめ|「読ませる」より、「読みたい」を育てよう

本好きになってほしい。

そう思うと、

「もっと読みなさい」

「今日はまだ読んでないよ」

「この本を読んでみたら?」

と、つい親が前に出たくなります。

でも、本来の読書は、

知らないことを知る。

物語の世界に入り込む。

笑う。怖がる。想像する。

そんな楽しい体験でもあります。

だから、

図鑑ばかりでもいい。

同じ絵本を何度読んでもいい。

簡単な本でもいい。

まずは、その子の、

「これ見たい」

「これ知りたい」

「もう一回読んで」

を大切にする。

そして、ときどき親が、

ほんの少しだけ知らない世界を見せる。

本好きにするために「読ませる」のではなく、子どもの「読みたい」を見つけて、少しだけ世界を広げる。

私は、それくらいの距離感がちょうどいいと思っています。


参考資料

  • Kim, J. S. et al. (2025). 子どもが読む文章を自分で選択することと、読書の楽しさ・読解との関係を検討した実験研究. Current Psychology.
    小学3年生を対象に、読む文章を自分で選択できる条件と割り当てられる条件を比較した研究。本文では「選択権」に関する根拠として参照しました。
  • Mohr, K. A. J. (2006). “Children’s Choices for Recreational Reading: A Three-Part Investigation of Selection Preferences, Rationales, and Processes.” Journal of Literacy Research, 38(1), 81–104.
    小学1年生が自由に本を選ぶ際の好みを調べた研究。情報を扱う本や動物をテーマとする本への選好について参照しました。
  • 2026年 Pediatric Research掲載:日本の小学1年生2,609人を対象とした、幼児期の親子共有読書とその後の読書習慣等との関連研究.
    0〜5歳の共有読書の累積期間と、小学1年生時点の読書習慣などとの関連について参照しました。観察研究であり、因果関係を直接証明するものではありません。
  • 文部科学省「子どもの読書活動と家庭における読書環境等に関する調査研究」
    保護者の読書習慣、図書館・書店の利用、本についての会話など、家庭での読書環境について参照しました。
  • 家庭のリテラシー環境と子どもの読解・リテラシー発達に関するメタ分析・研究レビュー
    家庭における本へのアクセスや親子での読書活動と、子どもの読書・読解との関連を整理する際に参照しました。

※本記事で紹介した研究の多くは、特定の家庭での関わりによって「必ず本好きになる」ことを示すものではありません。また「8冊は子ども、2冊は親」という方法は研究で最適比率が示されたものではなく、子どもの選択を尊重しながら親が少し世界を広げるための、筆者の実践的な提案です。研究知見と教育現場での経験を分けながら、家庭で取り入れやすい形に整理しています。

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