「これ、どうやるの?」
子どもに聞かれると、つい答えを教えたくなります。
でも、子どもの「考える力」を育てたいなら、すぐに答えを渡さないことも大切です。
もちろん、何も教えず放っておくという意味ではありません。
考えるのは子ども。親は必要なときだけ支える。
私はこの距離感が大切だと考えています。
今回は、家庭で今日からできる7つの関わり方を紹介します。
「教えない」のではなく「考える時間を奪わない」
文部科学省の幼稚園教育要領では、幼児期に育みたい資質・能力の一つとして「思考力、判断力、表現力等の基礎」が挙げられています。
その中では、子どもが遊びや生活の中で気づいたことを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりすることが重視されています。
また、幼児を対象にした研究でも、子ども自身の問題解決を支えるような親の関わりと、実行機能や自己調整との関連が報告されています。
大切なのは、
× 何でも子どもだけでやらせる
でも、
× 親が全部やってしまう
でもありません。
○ 子どもが考えられるところは待ち、必要なところだけ支える。
このバランスです。
① すぐ答えず「どう思う?」と返してみる
子どもから、
「これ何?」
「どうしたらいい?」
と聞かれたとき、答える前に一度、
「○○ちゃんはどう思う?」
と返してみます。
たとえば散歩中に、
「なんで葉っぱ落ちてるの?」
と聞かれたら、
「寒くなったからだよ」
ですぐ終わらせず、
「なんでだと思う?」
と聞いてみる。
「木がいらなくなったから!」
でもいい。
正解することより、自分なりの答えを一度つくってみることに意味があります。
もちろん、毎回質問で返す必要はありません。
会話が尋問のようになってしまったら本末転倒です。
「ちょっと一緒に考えてみようか」
くらいで十分です。
答えを先に教えてから「なんで?」もアリ
ここで一つ、私がよく使いたいと思う方法があります。
答えを教える=考える機会を奪う
とは限りません。
むしろ、答えを知らなければ考えること自体が難しい場合もあります。
そんなときは、
「答え」だけ先に渡して、その理由を考えてもらう。
たとえば、
「この大きい方が重いよ」
と教えてから、
「じゃあ、なんでこっちの方が重いと思う?」
と聞く。
あるいは、
「これは水に浮くよ」
と答えを伝えて、
「なんで浮くんだろう?」
と一緒に考える。
これなら、
「何が正解?」を考える
だけでなく、
「なぜそうなる?」を考える
ところまで一段深く進めます。
大切なのは、答えを隠すことではなく、子どもに“考える余白”を残すこと。
答えを教えるかどうかは、そのための手段の一つにすぎないと私は考えています。
② 子どもが話し始めるまで、少し待つ
大人にとっての数秒は短くても、考えている子どもにとっては大切な時間です。
「どう思う?」
……
この沈黙に耐えられず、
「○○じゃない?」
と言いたくなることがあります。
でも、もう少しだけ待ってみる。
以前、語彙力について紹介したときにも触れましたが、会話では子ども自身が言葉を出す余白も大切です。

すぐ答えが出なくても、
黙っている=何も考えていない
とは限りません。
③ 間違いをすぐ訂正しない
子どもが間違えると、
「違うよ」
と言いたくなります。
でも、危険がない場面なら一度そのまま試してみてもいい。
積み木が崩れそうなら、
「それじゃ倒れるよ!」
ではなく、
「やってみようか」
でもいい。
そして倒れたら、
「なんで倒れたんだろう?」
と一緒に考える。
失敗する → 気づく → 考える → もう一度試す。
この一連の経験も大切です。
正解を先に教えれば、失敗は減ります。
でも同時に、自分で気づく機会まで減らしてしまわないようにしたいと思います。
④ 困ったら「答え」ではなくヒントを渡す
もちろん、ずっと待てばいいわけでもありません。
本当に分からなくて困っているなら助けます。
ただ、答えを渡す前に、
ヒントを一つ。
たとえばパズルなら、
「ここだよ」
ではなく、
「同じ色のところないかな?」
折り紙なら、
「こう折るの!」
ではなく、
「この角とこの角、どうしたら合いそう?」
と聞いてみる。
発達研究では、大人が子どもの現在の力に合わせて支援し、できるようになれば支援を減らしていくような関わりが、scaffolding(足場かけ)という考え方で研究されています。

イメージとしては、
少し助ける → 子どもが考える → できそうなら手を引く。
最後まで親がやってしまわないことがポイントです。
⑤ 小さなことを子どもに決めてもらう
考える力は、問題集だけで育てるものではありません。
日常には小さな選択がたくさんあります。
「今日はどっちの服にする?」
「公園までどっちの道で行く?」
「この本とこの本、どっち読む?」
そして余裕があれば、
「なんでこっちにしたの?」
と聞いてみます。
「赤が好きだから」
「こっちの道に猫がいるから」
理由は何でもいい。
自分で選ぶ → 理由を考える。
日常生活そのものが、考える経験になります。
⑥ 失敗したら「次どうする?」を一緒に考える
ジュースをこぼした。
積み木が倒れた。
靴を左右逆に履いた。
そんなとき、
「だから言ったでしょ!」
より、
「どうしようか?」
を使ってみます。
何も思いつかなければ、
「拭いてみる?」
「新しいのを持ってくる?」
と選択肢を出してもいい。
重要なのは、失敗したことだけではなく、
失敗したあとにどうするかを考える経験。
失敗を「怒られる出来事」で終わらせず、次の問題解決につなげます。
⑦ 結果より「考えたこと」を認める
できたとき、
「すごい!」
だけでももちろん嬉しい。
そこにもう一言、
「よく考えたね」
「さっきと違うやり方を試したね」
と、過程にも目を向けてみます。
考えた。
試した。
失敗した。
やり直した。
工夫した。
成功したかどうかだけでなく、そこにも価値がある。
目指したいのは、
「正解できる子」だけではなく、「分からなくても考えてみる子」。
私はその姿勢を認めてあげたいと思います。
「待つ」と「放っておく」は違う
ここは誤解したくないところです。
子どもが困っていても、
「自分で考えなさい」
と何も助けない。
これは今回伝えたいことではありません。
子どもの様子を見ながら、
待つ。
難しそうなら、
ヒントを出す。
必要なら、
答えも教える。
そして、
「なんでそうなるんだろう?」と、もう一度考える機会をつくる。
できそうになったら、また手を引く。
この繰り返しです。
親が答えを知っていることと、今すぐ全部教えることは別。
このくらいの感覚でいいと思います。
こんな声かけに変えてみよう
| つい言ってしまう | こんな言い方も |
| 「こうやるんだよ」 | 「どうしたらできそう?」 |
| 「違うよ」 | 「一回やってみようか」 |
| 「ほら、ここ!」 | 「ヒントいる?」 |
| 「だから言ったでしょ」 | 「次、どうしようか?」 |
| 「答えは〇〇だよ」 | 「〇〇なんだって!なんでだと思う?」 |
| 「できてすごい!」 | 「色々考えたね」 |
全部変える必要はありません。
1日1回、答えを言う前か、言ったあとに「考える余白」をつくる。
まずはそれくらいで十分です。
まとめ|答えより「考える余白」を残す
親は子どもよりたくさんのことを知っています。
だから、教えた方が圧倒的に早い。
でも子どもの成長を考えると、あえて待った方がいい瞬間があります。
「どう思う?」
「ヒントいる?」
「次どうする?」
そして、ときには答えを教えて、
「じゃあ、なんでそうなると思う?」
でもいい。
大切なのは、答えを教えないことではありません。
子ども自身が考える時間を、親が全部埋めてしまわないこと
私は、この小さな積み重ねが、
「分からないから教えて」から、「まず自分で考えてみよう」へ
繋がっていくのだと思います。
参考資料
- 文部科学省「幼稚園教育要領解説」
幼児期に育みたい「思考力、判断力、表現力等の基礎」や、遊び・生活の中で考え、試し、工夫する経験について参照。 - Bernier A, Carlson SM, Whipple N. “From external regulation to self-regulation: Early parenting precursors of young children’s executive functioning.” Child Development. 2010.
幼児期の親による自律性支援や足場かけと、その後の実行機能との関連について参照。 - 幼児の問題解決場面における parental autonomy support / scaffolding に関する研究
子ども自身の問題解決を尊重しながら必要な支援を行う関わりについて、本文の考え方を整理する際の参考としました。
※研究で示されているのは特定の親の声かけを行えば必ず「考える力が伸びる」という単純な因果関係ではありません。本記事では、研究知見と幼児教育に関わってきた経験をもとに、家庭で実践しやすい形に整理しています。

